『ほめたのにハラスメント』 避けるには、どうすればいいのか?
ハラスメントの境界線はどこ?
はてブに上がっていくる記事に、「ハラスメントの定義がわからない」。もしくは「ここからハラスメントって、明確に決めてくれ」というようなブコメがついていることがあります。
パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、スメハラ……と、目につく名称は増えるばかりですから、こういうブコメを見る機会も、年々増えてきている感じがします。
絶対にハラスメントにならない言葉はないという事実
ハラスメントとは「人を困らせる 嫌がらせ」という意味の言葉。
人に嫌がらせをしてはいけない、というのは理解がしやすい話です。
ここまでなら、誰でも納得ができる。
各種ハラスメントには、それなりに定義があります。
公的に広報されていたり、職場で定義されていたり、講習が用意されていることだってある。
そういったものに従えば、道を大きく踏み外すことはない。
それなのに、困る、わかりづらい、明確でないという話が消えることがないのです。
個人的に、ハラスメント(嫌がらせ)についての話題がこじれやすいのは、
「どうして人に嫌がらせをしちゃいけないの?」
ということではなく、
「自分のどういう発言が、相手に嫌がられるかわからない」
という部分にあるのかなと思っています。
相手と良い関係を築きたい。
場の空気を和ませたい。
気をきかせたつもりでほめ言葉を発した。
それなのに相手に嫌がられてしまう。
ハラスメントをしたくない人にとって、これが非常に厄介かつ怖い部分なのかなと考えています。
ほめたのに嫌がられてしまうのはどうしてか?
そして、どうやったらハラスメントを避けられるのか?
今回の記事では、この2つについて考え、まとめていこうかと思います。
『ほめたつもりなのにハラスメント』
誰かを傷つけてやろう。
今日もいじめてやろう、などとを考えているわけではない普通の人が、もっとも直面しやすく、強く困惑してしまうのは
「自分としては、相手をほめたつもりだったのに、相手を怒らせてしまった(悲しませてしまった)」
という場面かと思います。
悪意があったわけじゃないのに。
自分としては、相手をほめたつもりだったのに。まさか、こんなことで怒られるなんて……。
もういっそ、人のほめ方をルール化してくれ!
こういった愚痴を、身近なところでも聞いたことがあります。
たとえば「美人ですね」って言ったとたん、相手がムスッとして、そのあと一言も口をきいてくれなくなった、とか。
「やせていていいね」って言ったら、人前にも関わらずさめざめと泣かれた、とか。
「スラッとしてて背も高くて、モデルみたいだよね」と言ったら、急に暗い顔になって話が弾まなくなった、とか。
合コンで「Aちゃんって顔かわいいし、おっぱいも大きくていい!」と発言したら、Aちゃんだけでなく女性陣から総スカンを食らったとか。(まあ、これはわかりやすい)
「せっかく場の空気をあたためようとほめたのに、なんで相手は怒るんだ?」と、疑問に思い、困惑してしまう。
こういうのを、個人的に『ほめたのにハラスメント』と呼んでいます。
いま出した例が、ハラスメントとして処罰される発言かというと(わかりやすい4番目を抜かせば)違うんじゃないかなと考えます。
前3つは、きっと処罰されない。
かといって、良い発言とも言えない。
相手が明確に嫌がっていますからね。場をあたためるという目的に関しては、完全に失敗しているわけです。
人それぞれが持つ 隠れた地雷と限界値
どんな言葉でも、傷つく人はいます。
100%気分を害さないというのは、不可能と思っていい。
でも、ハラスメントの手前で止まることは可能だと思っています。
ハラスメントの手前にあるのは、相手に嫌がれがちな言動です。
相手に嫌がられがちな言動が、第三者から見てもやり過ぎ、ひどいとなったら、ハラスメントの境界線を越してししまうわけです。
なので、ハラスメントの手前にある、相手に嫌がられがちな言動をしないように心がければ、自然とハラスメントを避けていけます。
相手に嫌がられがちな言動とは、どういったものでしょうか?
具体的な例を出す前に、まず肝に命じておきたいことがあります。
それは、一般的にはほめ言葉であっても、相手が嫌がり、傷つく言葉もあるという事実です。
さきほどの例で見てみましょう。
「美人ですね」
「やせていていいね」
「スラッとして背も高くてモデルみたい」
この3つは、一般的にほめ言葉とされる部類です。
しかし、こういった言葉に傷ついてしまう人もいるわけです。
「美人ですね」と言われて、傷つく、嫌がるというシチュエーション。
ちょっと考えづらいかもしれませんが、「美人」と呼ばれる顔でも、本人にはコンプレックスがあったりするのです。
私は美人の友人運に恵まれていて、和風美人からかわいい系美人まで。これまで、いろいろなタイプの美人に出会ってきました。
もちろん、容姿に自信を持っている人もいました。
……が、なかにはどんなに「きれい」と言っても、顔を曇らせてしまう人もいました。
彼女たちの悩みは、美人系の顔であること。
石原さとみさん、桜井日奈子さんなどのキュートな顔にあこがれている。
でも、自分では、どうしてもかわいい雰囲気になれない。
似合う服やメイクは、彼女たちとはまったく違うタイプだから……というものでした。
やせたいという人は、けっこうな数います。
だから「やせている」というのがメリットであり、素敵なことだと思うかもしれません。
でも、本人はその「やせている体」が嫌いかもしれません。
「太りたいのに太れない」
「拒食症」
「じつは闘病中」
考えようと思えば理由はいくらでも出てきます。
「背が高くてモデルみたい」な人だって、その背の高さが悩みかもしれません。
過去に、背が高いことで傷ついたかもしれません。
好きな人に「背の高さ」を理由に交際を断られたかもしれない。
人には、表からではわからない心の地雷があります。
また、1回くらいなら聞き流せる。3回くらいなら笑ってごまかせる。でも5回も言われたら我慢ができない、という心の限界値もあります。
心の地雷を知らずに踏んで、「知らなかった」「傷つくと思わなかった」と言い訳をする。
みんなが言ってるから、これが相手の定番ギャグなのかな? と思って言ってみたら「もう我慢できない!」と怒られ、「なんで自分だけ!?」と反発をする。
自分かどうかは抜きに、そういう場面に出くわしたことって、一度はあると思います。
心の地雷を踏まないために、個人的に気をつけていること
人の心は複雑です。
そして、心は人の数だけあります。
ただでさえ見えない心の地雷を、完璧に見抜くことはできません。
そしてこの見えない心の地雷が、ハラスメントの境界線がわかりづらい。明確でない、と感じてしまう原因になっているのでしょう。
しかしながら、心の地雷を避けて、嫌がられがちな言動しないことは可能です。
そして、心の地雷を踏まなければ、心の限界値に達することもなくなります。
地雷の避け方は人それぞれ。
各人に、自分なりのポリシーがあることでしょう。
今回は、私のポリシーとその考え方をまとめてみたいと思います。
私の場合、相手をほめるとき、『ほめたのにハラスメント』にならないよう気をつけていることが、3つあります。
- 本人の努力で変えられない部分に言及しない
- 相手をほめる時は、できるだけ1対1の場面で
- 人前では「良い」「好き」より「感謝」を表明する
とりあえずこの3つを意識しているだけで、嫌がられがち問題は避けてこられました。
いままで渡り歩いた職場に、女性の在籍人数200名、男性の在籍人数100名といった大所帯もありました。
しかし、ハラスメント系のトラブルに巻き込まれたことはありません。
本人の努力で変えられない部分、変えにくい部分に言及しない
もっとも大事なポリシーはこれです。
本人の努力で変えられない部分。
たとえば体のパーツ。身長、体重、胸、ウェスト、足、手、顔などなど。
本人の努力ではどうにもできない箇所。
もしくは手術でもしなければ変えられない箇所は、絶対に話題にしません。
この話をすると「体重なんてすぐに変えられる」という人がでてきます。
「言われるのがいやなら、がんばって痩せればいい」というのが理由です。
私は、この考え方を採用していません。
さきほども触れたように、体質で難しかったり、闘病中であったり、薬の副作用であったりする可能性があります。
なので、体全般や体質については、かなり親しくならない限り。
そして本人から申告がないかぎり、話題にしたりしません。
逆に、いくらでも変えられる箇所については話題にします。
このときは、言動が比較にならないように気をつけています。
例えば「新しい服を買ったの? すごくよくなったね」では、「じゃあ、前はダメだったってこと?」という話になってしまいます。
髪型を変えたなら「新しい服を買ったの? こっちも似合うね!」という言い方にしています。
相手をほめる時は、できるだけ1対1の場面で
人によっては、人前でほめられること自体がダメという人がいます。
傾向として美人であったり、かわいかったりする人が多いです。
「人に聞かれたくない」「聞かれたら悪く言われてしまうかも」というのが、その理由。
けなしたり叱責してるわけじゃないし、ほめるならいいじゃん、と思いがちですが。こういう人たちは、嫉妬がどれだけ怖いもので、人間関係に悪影響かを、身をもって知っています。
美人に嫉妬というと、女性を思い浮かべる人が多いかもしれません。
でも、男性も美人に嫉妬をします。
美人なその人を狙っている男性が、他の男にほめられているところを目撃し。嫉妬にかられて、わざと怒ってるアピールをしたり。露骨な無視をしたり。
気に入られたいと思っている上司が、美人に甘い態度をとろうものなら、上司がいない場で、ネチネチといやみを言ったり。
考えただけで、もうめんどくさい。
人前でほめると、そういう事態になる可能性もあるわけです。
ですから、相手をほめる時も1対1。
自分たち以外がいない場所が、一番いいと考えています。
ただし。
「よーし。あの人をほめるために、がんばって1対1になるぞ!」と、張り切るのはやめておくのが無難です。
自然と1対1になれない関係で無理をすれば、どうしてもぎこちなさが出ます。
不自然さは相手を強く警戒させます。
自然と1対1になれない関係なら、ポリシーの3番目をがんばるほうがいいかなと考えます。
人前では「良い」「好き」より「感謝」する
人前で場を和ませたいときは、おもに「感謝」を伝えます。
そもそも「良い」とか「好き」とかは、どれだけ洗練された表現であっても。
スマートでセンスあふれるものであっても。
非常に個人的な「感想」であり「評価」です。
わざわざ人前で表明する必要は、最初からありません。
人によって「評価」すること自体、失礼と感じることもあります。
そのため、「感謝」を伝える時には、「本当にいい人」などの評価的な言葉は使わないようにしています。
どうしても「感想」や「評価」をのべないといけないシーンなら、「良い」よりも「好き」を使うようにも気をつけています。
「良い」より「好き」のほうが、評価している感じが薄いからです。
人前で伝えるポジティブな言葉なら、何よりも「感謝」が最適です。
「感謝」って、あやしい自己開発っぽい感じが付随するときもありますが、これほど便利な人間関係ツールはないと思っています。
コップをありがとう。
仕事を助けてくれてありがとう。
教えてくれてありがとう。
お声がけありがとう。
小さなことから大きなことまで、人前で言うなら「ありがとう」が超絶便利ワードです。
「コップ用意してくれたのって、あなた? 助かった、ありがとう!」
これなら、ハラスメントになりようがありません。
自分のほめ方に、いまいち自信がないとき。うまいこと言えそうにないときは「感謝」がオススメです。
まとめ
長くなったのでまとめます。
- 自分がほめたつもりでも、ハラスメントになることはある
- ハラスメントを避けるためには、嫌がられがちな言動をしないこと
- どんなほめ言葉でも、嫌がる人は嫌がる
- 心の地雷と心の限界値に注意する
- 相手をほめるときは、ふれていい話題、ふれていい場所かを気をつける
- 場を和ませるときは、ほめるより感謝を
相手がいくらでも変えられる箇所に注目する
人が聞いてない場所で伝える。
人がいる場所で何かを伝えるときは、「感謝」を伝える。
これで、だいたいのハラスメントは避けられると考えています。
いつも自然とやっていることを、言葉にして書き出してみると、けっこう疲れますね。
こんなことを日常でこなすなんて、対人関係って本当に大変だなとつくづく思います。
記事をまとめていたら、ほかの人がどんなポリシーを持っているのか興味が出てきました。
いい情報やブコメを見つけたら、いつかまとめてみたいと思います。